石垣島の食卓から始まる、知られざる領土の話
石垣島で魚好きに向けておすすめを聞くと、かなりの確率でこの名前が返ってくる。
アカマチ。
鮮やかな赤橙色の体をもつ深海魚で、標準和名はハマダイ。沖縄三大高級魚のひとつに数えられ、地元では「これを食べずに八重山を語るな」とまで言われる。刺身にすると甲殻類を思わせる甘みと鯛に似た風味が重なり、煮付けにすれば「味クーター(味が濃い)」と表現されるほど深い旨味が口に広がる。

ところが、このアカマチに「尖閣」という言葉が冠されると、話は少し様相が変わってくる。
最高の漁場は、最も危険な海にある
石垣島から北西へ約170km。東シナ海に浮かぶ尖閣諸島の周辺海域は、豊かな潮流と地形が生み出す天然の好漁場だ。
魚釣島の南西沖、深い瀬に仕掛けを落とすと、型のいいアカマチが上がってくる。漁師はそれを船上で一本釣りし、すぐに血抜きと神経締めを施す。この作業ができる職人は少なく、鮮度と味を左右する命綱だ。
八重山漁業協同組合はこの尖閣産アカマチを「尖閣マチ」として商標登録し(2013年取得)、ブランド化を進めてきた。船上で丁寧に処理された個体は冷凍で流通し、石垣市のふるさと納税返礼品にもなっている。

ただし、このブランドには重大な問題が伴っている。
漁師を遠ざける「もうひとつの存在」
尖閣の海に出るには、往復で約10万円の燃料費がかかる。それだけでも十分にハードルは高い。だが、今の漁師たちが最も恐れているのは、燃料代ではない。
中国海警局の船だ。
2012年に日本政府が尖閣三島を国有化して以来、中国海警局に所属する船舶は、荒天の日を除きほぼ毎日、尖閣周辺の接続水域を航行するようになった。月に数回は日本の領海に侵入し、付近で操業する日本漁船に接近する事案も繰り返されている。
海警船の動向はエスカレートの一途をたどっている。2020年以降、日本漁船を標的にした領海侵入が増加し、2022年には6月と7月だけで延べ64時間にわたって日本漁船を追跡・接近し続けた記録が残っている。搭載する武装も大型化し、76mm機関砲を備えた重武装艦が領海内に入った事例も確認されている。
与那国町漁業協同組合の組合長は、こう語ったという。
「日本は尖閣諸島をあきらめたのと同じ。中国側に拿捕されるかもしれないと思うと、近くに漁に行けない」
漁師たちの足が遠のいた海に、中国海警船だけが居続ける。
「食べる」という静かな抵抗
こうした状況の中で、八重山漁協と石垣市が選んだのは、経済と文化の力による「存在証明」だった。
尖閣ブランドの魚を流通させ、消費者に届けること。それは漁師が実際に現地海域に出漁し続けることを意味する。出漁があるかぎり、日本の漁業者による実効的な利用は継続される。
ふるさと納税の仕組みも、その論理のうえに成り立っている。寄付が一定数集まったタイミングで漁師が尖閣に出向く。つまり、あなたが「尖閣アカマチ」を注文するという行為が、文字通り出漁の引き金になる。
食べることが、海の存在証明になる。
少々大げさに聞こえるかもしれないが、実態はそういう構造だ。
それでも漁師は海へ出る
2026年3月、中断していた尖閣アカマチ漁が再開されたというニュースが伝わった。八重山漁協が石垣海上保安部に改めて相談し、海保から「操業の際は万全の体制で対応する」との言質を得たうえでの決断だった。
出漁当日、中国海警船2隻が領海に侵入し、漁船に接近しようとした。海保の巡視船が進路を規制し、漁は続けられた。
何事もなかったように見えるかもしれない。だが、その「何事もなかった」を成立させるために、どれほどの緊張と準備があったか。そこに想像を及ぼすだけで、食卓に届く一切れのアカマチの重みが変わってくる。

石垣島で「尖閣アカマチ」に出会ったら
石垣島のレストランや鮮魚店で「尖閣マチ」「尖閣アカマチ」と表示を見かけたら、その一皿は単なる高級魚ではない。
刺身で食べるなら、甘口醤油で。煮付けなら、八重山の昆布だしと合わせると複雑なうまみがさらに重なる。
旅の帰りには、ふるさと納税の返礼品として取り寄せるのも一手だ。石垣市への寄付が、次の出漁につながる。
この海の豊かさも、この海をめぐる緊張も、両方を知ったうえで食べる一皿は、きっと格別に味わい深い。
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